SI業界でいう「案件」とは何か? そこには残業不可避の現場がある

ブラック企業と聞いて真っ先に思い浮かべる会社はどこですか?

恐らく多くの人が「うちの会社」と答えるのだと思います。
世の中、特に東京都心ですが、ブラック企業が多すぎて今やブラックじゃない会社に勤めている人の方が珍しいのでは?

かつてプロパー社員の一人が、2徹明けの昼休みにこう言っていました。

昔はこれが当たり前だったのに、若い人が『ブラック、ブラック』言うから普通の企業でもブラック扱いされるようになった

それは、ある種の真実なのでしょう。
物事の捉え方が変わったという意味では。

軟弱?懦弱?

その判断は個人にお任せします。

だから、今回紹介する「案件」単位で進む仕事のやり方に違和感を覚える人も覚えない人も両方いるのだろうと思いつつ、ちょっと紹介してみることにします。

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案件という概念

SI業界には「案件」という概念があります。

たとえば「M証券の取引システム作成」というプロジェクトがあったとします。
だいたいこういうプロジェクトは、略して「Mシス」とか頭文字取ってアルファベット3文字「MTS」とかで略されます。

案件というのは、さらにその下、システムの中の機能にあたるものに対して発生します。

・山の日対応案件
・FX改修案件
・豪ドル案件
・マイナンバー案件

などなど。
取引システムの中にある細かな機能の新規対応や改修が、全て「案件」という形で諸々パッケージングされています。

こんなイメージです。

案件を担当するということ

だいたいこの一大プロジェクトは、大企業が請け負うことになります。

ですが「取引システム」の機能は、当たり前ですが多岐に渡っていて、時にはプロジェクトメンバーよりも案件の数が上回ることだってあり得ます。
「案件」1つに付き1人で対応なんて、そんな馬鹿なこともありませんよね。
(実際にはわりとありますが)

なので、大企業も協力会社の社員と契約することになります。
また、案件の中でもバックエンドはうちでやるけど、フロントエンドは別の会社に任せよう、となったら所謂孫請けというやつが発生するわけですね。

この記事で紹介したようなデスマーチの入口は、こういうところから生まれます。

さて、役割分担が明確で一見効率的にも思える「案件」というやつですが、これが時に地獄の日々の始まりになります。

案件自体がプロジェクトレベルの大きさだったら、もしかしたらまだましなのかもしれません。
現場ごとに1案件ならまだ救いはあるかもしれません。

ところが、1フロアに複数案件が固まっている時は要注意でしょうね…。

残業不可避になる理由

そもそもSI業界にいて定時で帰れるなんていったいどこの優良企業なんですか日立ですかって話ですよね。

ここでは実際に僕が体験し、もう2度と体験したくない現場の話をします。

案件の乱立による人手不足

まず、「取引システム」なんていうウェブシステムのプロジェクトっていうだけで先が読めるようなもんです。

ページ一つ取っても、

・トグルメニュー
・説明書の表示
・表示される文言

などなどのちょっとした機能で、それぞれ1案件になっていることもあります。

なので「案件」は数個のレベルで済むわけもなく、何十というレベルで案件が乱立します。
1案件ごとに「特定口座(開設済)」「特定口座(未開設)」「NISA口座(開設済)」…などなど、場合分けのパターンも相当数あります。

どこかおかしいところがあると、「おい、バックエンドどうなってんだー」となるわけですから、実は分担が作業の遅延になることもしばしば。

案件が乱立すると必然、1案件あたりのメンバーも少なくなります。
というか、本来なら10人でやる作業を想定してお客さんに提案している案件をこっそり5人で対応したりしてがっぽり稼ぐことが大半なので、人手不足はデフォルト。

上が雇う気ないんだから人は基本的に足りないんです。
こんなことがあるので、残業しなくていい日なんて基本的にありえません。

1人1案件という地獄

「案件」1つに付き1人で対応するわけにもいかないと書きましたが…実際は1案件を1人で対応することもあります。

そんなに頻繁にあるケースではないですが、同僚がやらされたときは1週間家に帰っていませんでした。
納期まで健闘してはいましたが、結果は散々。

仕事に「過程」なんて関係ありません。
出来上がった成果物がゴミだったら、その人のやったこともゴミ扱いされます。

同僚は会議に呼び出され、皆の前で謝罪させられました。
その後、お客さんのところにも謝罪に行って、別の案件から人を借りてきてなんとか事なきを得るという結果に。

1人1案件ということは、その仕事の責任が全てその人にのしかかるということなんです。
しかも同僚は平社員ですよ。
現場に入ってまだ1年経っていないような人で、プロジェクトの内容も理解しきれていなかったはずです。

それでも任されたのは信頼されていたからでしょうし、実力を買われていたからなのでしょう。
彼ももしかしたら出世のチャンスと思ったかもしれません。

そうだとしても、彼一人を槍玉に挙げてやりすごす企業の体質ってどうなんだろうと思いますけどね。

複数案件の掛け持ち

1人1案件があれば1人で複数案件というのもありえます。

これに関しては、僕も逃れることができませんでした。
C言語のバックエンドをやりながら、JSのフロントエンドとかテスターとかいう役割を与えられたことがあります。

先にも書きましたが、フロントエンドで問題が起こると「バックエンドどうなってんだー」となるわけですよね。

その時の僕はたまたまバックエンドの改修をやっていました。
そっちの改修は結構終わり際くらいに来ていて、残業もだんだんと減ってきていたのです。

そこに目をつけたお偉いさんが、「案件間のやり取りを減らし、効率化を図りたい」という理由でバックエンド経験のある僕をフロントエンドの案件と掛け持ちさせることにしました。

案件内で「想定してるデータが取れないんですけど」ってなった時に、「わかりました…見てみますね」と対応するのが僕です。

ええ、僕だけです。

案件内で発生するデータ不整合などの問題は僕が全て引き受け、僕が全て対応することになってしまいました。
おまけにテストまでやらなければいけません。

しかもそれだけじゃない。
案件掛け持ちなのだから、元々の案件だって疎かにはできないんです。

こうして二つの案件を掛け持ちすることになった僕が、どれほど残業したのかはもうお察しの通りです。

あるいは、僕はまだ良かった方なのかもしれません。
本当にできる人になると、3つ4つ普通に掛け持ちさせられます。

座る暇がないくらい動き回っている人もいます。

最強クラスの技術者になると、プロジェクト全体を見て回るようなフロアの守り神になります。

思い出すだけでも怖ろしい話です…。

まとめ

プロジェクトの下で発生する機能単位(もちろんプロジェクト内容によって単位は変わりますが)の仕事が、SI業界でいう「案件」です。

(ここまで書いておきながらもしかしたら特殊な事例だったのかもと思えてきた)

1フロアに案件が乱立している状態の現場で、ブラックじゃない環境というのは恐らくあり得ないです。

まあその辺は一応大企業なので、社員のケアの仕方も分かっていたのが救いでしょうか。

カウンセリングルーム、仮眠室(ベッドあります)、シャワールーム、24時間営業のコンビニ、パワードリンク販売機、アイランドキッチン、ダーツルーム、などなど。
確かに住めるレベルで設備は充実していました。

あとたまにパーティもやっていましたね。
シェフがやってきて、備え付けのアイランドキッチンで料理してくれます。

協力会社の社員だった僕は参加しちゃいけないんですが、コップ片手に親しげに人と話していればだいたいばれないので、しれっと参加して夕飯もらってました。(後日なぜか別PJの人と麻雀行くことになったりもしました)

こんなこともあったので、土日休みはほとんどなくても、他の現場に比べれば結構ストレスフリーにやれていたような気がします。

もしもこの待遇がなければと思うと…ゾッとしますね。
そしてSI業界では、そういうところで働いている人の方が多いのだということを忘れてはいけないところです。

以上、僕の経験に基づいた「案件」というものの具体的な説明でした。

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